Special feature
新所沢の夜を灯す36歳。
店主・井上さんがLLOYDで見つけた「一生飽きない」仕事。― LLOYD 店長 井上嶺さんインタビュー
Ryo Inoue
井上 嶺いのうえ りょう
LLOYD
店長 兼 料理人/2023年9月 立ち上げから着任
1990年生まれ、所沢市出身の36歳。空調設備の職人を経て2015年、25歳で「ひかり荘」に入社し飲食の道へ。2023年9月に「LLOYD」の立ち上げから店長兼料理人を任される。
INTRODUCTION
所沢で、好きなことだけで生きている人がいる、と聞いたらどう思いますか。西武新宿線・新所沢駅から歩いてすぐ、夜の帳が下りる頃に明かりが灯る「LLOYD」。そこでカウンターに立つのは、かつて空調設備の職人をしていたという異色の経歴を持つ井上さん(36歳)です。1日12時間近くお店にいることもあるという彼が、なぜこれほどまでにこの仕事に没頭しているのか。その答えを探しに、夜の新所沢へ向かいました。
CHAPTER 01
職人から「ひかり荘」へ。飲食の道を選んだ意外なきっかけ
新所沢の街を歩いていると、ふと目を引く洗練された外観のお店があります。2023年9月にオープンした「LLOYD」です。店長の井上さんは、36歳。取材でお会いした彼は、シュッとした立ち姿ながら、どこか親しみやすい空気感をまとっていました。
もともと井上さんは、飲食とは全く別の世界にいました。「最初は空調屋をやってまして、職人をしていたんです」と、意外な過去を教えてくれました。けれど、心のどこかではずっと飲食業が気になっていたと言います。
「初めてのアルバイトがひょうたん別館だったんですけど、その時の感覚がずっと残っていて。職人をやっている時に、やっぱり人と話す仕事がしたいなって恋しくなっちゃったんですよね」
そんな時、当時行きつけだったダイニングバー「ひかり荘(ひかりそう)」のオーナーに「雇ってくれ」と直談判。そこから彼の本格的な飲食人生が始まりました。2015年、25歳になる年のことでした。
「ひかり荘」では、お酒の知識も技術も、その時代に徹底的に叩き込まれたそうです。
職人をやっている時に、やっぱり人と話す仕事がしたいなって恋しくなっちゃったんですよね。
CHAPTER 02
バーの枠を超えた「料理」へのこだわり。新所沢で愛される理由
LLOYDに入って驚くのは、そのメニューの豊富さです。いわゆる「バーのおつまみ」を想像していると、いい意味で期待を裏切られます。
「フードは、もうバーで出すものの範疇は軽く超えていると思います(笑)。洋食も中華も和食も、一通り作れるので。その日の材料で、メニューにないものを作ることも多いですね。常連さんもそれだと飽きないじゃないですか」
取材中、見せてもらったインスタグラムの写真は、どれも専門店顔負けのクオリティでした。特に締めの一杯として提供される「しじみラーメン」は、それだけを目当てに深夜のカウンターがラーメン屋さんのようになることもあるのだとか。
井上さんがここまで料理に力を入れるのには、新所沢という街の特性も関係していました。「この辺りで、深い時間までしっかりご飯が食べられるお店って、実はなかなかないんですよね。だったら、僕がやろうかなって」
現在、厨房に立ってフードを作るのは井上さんお一人。立ち上げ当初、飲食未経験だったスタッフたちのフォローをしながら、徐々にメニューを増やしていったそうです。スタッフの成長に合わせて、お店の形も少しずつ進化させていく。そんな柔軟な姿勢が、今のLLOYDの居心地の良さを作っているのかもしれません。
CHAPTER 03
新所沢という街と、30代の私たちができること
お店作りについて聞くと、井上さんの口からは周囲のお店への感謝が次々と溢れました。「オープンしてすぐ、隣の『エルボラッチョ』さんをはじめ、周りのお店にすごく助けていただいたんです。バーの隣にバーを出すって、普通なら少し気まずいじゃないですか。でも、すごく快く受け入れてくださって」
この「飲食店同士の繋がり」こそが、新所沢の温かさだと井上さんは言います。一方で、街の活気がかつてに比べると少し寂しくなっていることも、率直に感じているそうです。
「オーナーも、昔の栄えていた頃の新所沢のイメージが強かったみたいで。やっぱり、もっと人が集まる街にしたい。そのためには、僕ら30代の世代が引っ張っていかなきゃなって感じているんです」
今は50代の先輩たちが現役で街を盛り上げていますが、次はその下の世代である自分たちが新しい風を吹かせたい。井上さんの言葉には、決して奢りではない、この街を背負っていく覚悟のようなものが混じっていました。それは、取材メモを書きながら少し手が止まるほど、真っ直ぐな言葉でした。
CHAPTER 04
1日12時間店にいても飽きない。この仕事が「天職」だと言える理由
井上さんのスケジュールを聞いて、思わず「え、それ大丈夫なんですか?」と聞き返してしまいました。19時半には店に入り、店を出るのは翌朝。1日10時間、12時間お店にいるのはザラだと言います。
周りからは「セルフブラックだね」なんて冗談めかして言われることもあるそうですが、本人はどこ吹く風。「うーん……えーとですね、全然、そんなつもり全くなくて。本当にカウンターに立ってお客さんと喋ってるとかね、料理作ってる、お酒作ってるっていうのがすごい僕は好きで。家にいるより店にいる方が長いんじゃないかって思います(笑)」
飲食業の魅力を尋ねると、彼は少し考えてから、大切に言葉を選んでくれました。「普通に生活していたら、絶対に出会わないような人と接点が持てる。人脈が豊かになるっていうところは、本当に飲食で生かされているなって思います。自分には特別な能力がないと思っているんですけど、色々な人に助けてもらって、ここまで来れたので」
家にいるより店にいる方が長いんじゃないかって思います(笑)
CAREER STORY
これまでの歩み
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学生時代
飲食の楽しさを知る
初めてのアルバイト先「ひょうたん別館」で、人と話す接客の面白さを知る。その後は空調設備の職人として働くも、飲食業への思いは消えなかった。
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2015年
25歳、飲食の道へ
行きつけだったダイニングバー「ひかり荘」のオーナーに直談判し入社。空調職人から転身し、お酒の知識と技術を一から叩き込まれる。
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修行時代
経験を重ねる
接客と料理の腕を磨く。バーの枠を超えた本格フードへのこだわりも、この時期に育まれた。
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2023年9月
「LLOYD」立ち上げ
新所沢に「LLOYD」がオープン。立ち上げから店長兼料理人を任され、洋食・中華・和食まで一通りこなす本格フードで店の個性を作り上げていく。
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これから
30代で新所沢を盛り上げる
周りの飲食店との繋がりを大切にしながら、50代の先輩たちに続き、30代の世代として新所沢に人が集まる街づくりを引っ張っていきたいと語る。
CAREER DATA
数字で見る井上さん
EPILOGUE
新所沢の夜を、灯し続けて
取材の帰り道、夜風にあたりながら井上さんの言葉をぼんやり思い出していました。自分の好きな場所で、好きなことを続け、そこに集まる人たちを大切にする。そんなシンプルなようでいて難しいことを、彼は新所沢のカウンターで淡々と、でも楽しそうに続けています。
外から見ると少し高級感があって、初めての人は「入りづらいかな」と感じるかもしれません。でも、一歩足を踏み入れれば、そこには誰よりもお店と人が好きな店長が、とびきりの料理とお酒を用意して待っています。今夜は少し深い時間まで、新所沢の夜に身を委ねてみたくなりました。
編集後記
取材中、井上さんが「好きなことだけやってきた」と笑った顔がとても印象的でした。12時間お店にいても、それが「遊びの延長のように楽しい」と言い切れる強さ。新所沢の夜が温かいのは、こうした店主たちが灯す「好き」の熱量のせいかもしれません。
PROFILE
プロフィール
井上 嶺
いのうえ りょうFAQ
よくある質問
Q.LLOYD(ロイド)は予約なしでも入れますか?
A.はい、基本的には予約なしでお気軽にお越しいただけます。ただ、週末や遅い時間帯は混み合うこともございますので、大人数でのご利用や確実にお席を確保したい場合は、事前にお電話やInstagramのDMでご連絡いただけるとスムーズです。
Q.お酒があまり強くないのですが、食事メインで伺っても大丈夫ですか?
A.もちろんです。店長の井上さんは本格的な料理を得意としており、「深夜のラーメン屋さん」として利用される方もいらっしゃるほどです。ソフトドリンクやノンアルコールカクテルもご用意しておりますので、美味しいご飯を楽しみにぜひいらしてください。
Q.お店でスポーツ観戦はできますか?
A.はい、店内にモニターを設置しており、スポーツ中継を流していることもあります。ラグジュアリーな雰囲気の中、お酒を片手に仲間とスポーツを楽しむ、パブのような側面も持ち合わせているのが当店ならではの楽しみ方です。
NEXT STORY
今夜は、新所沢のLLOYDへ。
空調職人から店長へ。井上さんが振る舞う本格フードとお酒が、新所沢の夜を彩ります。
気になる方は、まずInstagramをチェックしてみてください。
自分には特別な能力がないと思っているんですけど、色々な人に助けてもらって、ここまで来れたので。これからも新所沢で、好きなことを楽しく続けていきたいです。